韓国を代表する観光地、北村韓屋村(プッチョンハノッマウル)に激震が走っています。深刻なオーバーツーリズム対策として、2024年11月から試行されていた「観光客の通行制限」が、2025年3月より正式に罰金制度を伴って施行されました。
「せっかく行ったのに追い出された」「知らずに歩いていたら罰金を請求された」なんてことにならないよう、最新のルールを徹底解説します。これからソウルへ行く方は必ずチェックしてください。
2025年3月から開始!最新の観光規制

住民の生活を守るため、北村は全国で初めて特別管理地域に指定されました。これは、単なるマナー啓発を超えた法的拘束力を持つ規制です。
17時以降は立入禁止!夜間制限の基本
北村の象徴とも言えるメインエリア(レッドゾーン)では、17:00から翌朝10:00まで、観光目的の立ち入りが厳格に禁止されました。
- なぜこの時間か?:夕方以降は住民の夕食や家族との団らん、そして夜間の睡眠を確保するためです。
- 現地の様子:16:30を過ぎると拡声器や案内ボードを持った監視員がエリア内を巡回し、速やかな退場を促します。
- 注意点:日没後の美しい夜景を背景に自撮りをする、といったこれまでの定番観光は一切できなくなりました。
違反者は罰金10万ウォン!過料の仕組み
17時を過ぎて制限エリア内に滞在、あるいは侵入した場合、韓国の法律(観光振興法)に基づき罰金が科せられます。警察および鍾路区の特別案内員が巡回しています。
- 罰金額:一律10万W(約11,000円)。
- 支払い方法:現場で警察や特別司法警察管理がパスポート等の身分証を確認。後日またはその場で納付を求められる厳格な運用です。
- インパクト:ソウルで人気のビビンバやソルロンタンが約10回食べられる金額です。旅行の予算が大きく削られることになるため、決して「知らなかった」では済まされません。
日曜日は路地休み?最新の曜日別ルール
さらに注意が必要なのが日曜日です。北村では日曜日を「路地休みの日(Alley Rest Day)」に指定しています。快適に観光したいなら、比較的ルールが安定している月〜土曜の10時〜17時を狙うのが鉄則です。
- 月曜日〜土曜日:10時〜17時の間のみ観覧可能。
- 日曜日:公式に「路地休みの日(Alley Rest Day)」とされ、全ての訪問を控えるよう強く推奨されています。
- 背景:週末に自宅でゆっくり休みたい住民の声が反映されたものです。日曜日に訪れると、平日以上に厳しい目が向けられる可能性があるため、避けるのが賢明です。
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立ち入り禁止のレッドゾーンはどこ?

全てのエリアが禁止なわけではありません。最も有名なあの坂道を含む約34,000㎡が対象です。
メイン通り「北村路11ギル」が対象範囲
SNSで「北村」と検索して出てくる写真の9割は、この北村路11ギル(Bukchon-ro 11-gil)で撮影されたものです。「韓屋越しにソウルタワーが見える坂道」がレッドゾーンの中心になっています。
- 具体的な場所:安国駅2番出口から徒歩8分。ネイチャーリパブリックの角を曲がった先にある「北村路11ギル(Bukchon-ro 11-gil)」の一帯。
- 範囲の目安:最も美しいと言われる急な坂道の上から下まで、左右の脇道も含む全てが「レッドゾーン」です。
- 看板の設置:入口には「Tourist Limit Zone」と書かれた赤い看板や地面のマークがあり、結界のように示されています。
オレンジ・イエローゾーンとの規制の違い
鍾路区は、被害状況に応じてエリアを色分けしています。
| ゾーン色 | 名称 | 規制のレベル |
|---|---|---|
| レッド | 訪問時間制限区域 | 17時以降は罰金対象。 最も厳しい。 |
| オレンジ | 集中管理区域 | 居住者以外の不審な行動や大声を24時間監視。 |
| イエロー | 観光指針区域 | 案内員が巡回し、「静かにして」と注意を行う。 |
実質的にあなたが写真を撮れるチャンスは1日わずか7時間です。
おすすめの戦略:10時の解禁と同時に到着し、30分以内にメインの坂道を攻略。その後は比較的規制の緩いイエローゾーンへ移動するという流れが最も効率的です。
監視員「北村ウォーカー」の実態
現地にはカウボーイハットを被った北村ウォーカーと呼ばれる案内員が多数配置されています。彼らの武器は4ヶ国語(韓・英・日・中)の案内ボードと時には拡声器です。
16:30頃から案内が強まります。彼らの指示に従わない場合、罰金処分の優先対象になるため、笑顔で会釈して速やかに移動しましょう。

罰金を回避する!観光客が知っておくべき特例

規制エリア内でも、特定の正当な理由があれば17時以降の通行が許可されます。
韓屋ステイ(宿泊者)は時間外も通行可
レッドゾーン内にある宿泊施設を予約している場合、この規制は適用されません。予約完了画面や宿泊確認書をスマホで提示できるようにしておきましょう。宿泊する場合、移動するのはOKですが、宿の前で大声で騒ぐと近隣住民に通報されるリスクがあるので注意してください。
【2026年解禁】観光バス進入禁止で安国駅周辺はどう変わる?

これまで北村韓屋村の入り口である安国(アングク)駅周辺は、団体客を乗せた大型観光バスの路駐や排気ガス、そして深刻な渋滞が日常茶飯事でした。しかし、2026年1月より大型バスの進入そのものが厳格に制限されます。
バス規制の具体的な対象区間と罰金
2025年7月からの試験運用を経て、2026年に本格施行されるこの規制は、非常に広範囲に及びます。
- 規制区間: 安国駅(地下鉄3号線)から三清(サムチョン)公園入口までの北村路約1.5km〜2.3kmの区間。
- 対象: 団体客を乗せた貸切バス(大型バス)。
- 罰金額: 違反したバス会社には最大50万ウォン(約55,000円)の過料が科されます。
- 例外: 住民が利用する路線バス、スクールバス、通勤バスは除外されます。
排気ガスとクラクションのない街へ
これまでの北村路は1車線を占拠して客を降ろす観光バスによって、常に慢性的な渋滞が発生していました。2026年以降、安国駅周辺の交通環境は以下のように劇的に変わると予測されています。
- スムーズな車両通行: バスによる車線塞ぎがなくなり、タクシーや市内バスの運行速度が上がります。
- 騒音と排気ガスの減少: アイドリングによる振動やバス同士のクラクションがなくなり、歩行者がより安全に綺麗な空気の中で散策できるようになります。
- 歩行者天国のような快適さ: 巨大なバスの圧迫感が消え、韓屋の景観が視覚的にも本来の美しさを取り戻します。
個人旅行者にとってのメリットと注意点
この規制は、一人旅や家族旅行を楽しむ個人旅行者にとっては追い風となります。
- 写真にバスが写り込まない: これまで背景を邪魔していた大型バスが消え、SNS映えする写真がより撮りやすくなります。
- 団体客の波が分散される: 駐車場が離れた場所に設定されるため、一度に数百人が坂道を埋め尽くす団体客の波が緩和されると期待されています。
- 注意点: 自身が団体ツアーを利用する場合、バスの降車場が景福宮周辺などの少し離れた場所になり、そこからかなり歩くことになります。ツアー選びの際はどこで降ろされるかの確認が必須です。
規制を逆手に取る!賢い北村の歩き方

制限があるからこそ、スケジュールを賢く組む必要があります。
朝イチ「10時」を狙うのが最強な理由
解禁の10時ジャストに到着すると、以下のようなメリットがあります。
- 無人の路地: 団体客が来る前の「無人の韓屋」を撮る唯一のチャンス。
- 住民の優しさ: 観光客が少ない時間帯は、住民の方も比較的穏やかに接してくれます。
- 午後の混雑回避: 12時を過ぎると修学旅行生やツアー客で溢れるため、午前中にメインを終えるのが正解です。
体験談
実際に10時を目指して行きましたが、ぴったり10時になるまで北村ウォーカーが規制していて、一歩も入れません。10時を過ぎると北村ウォーカーが誘導してくれます。団体客もおらず比較的余裕をもって歩けました。
17時以降は隣の「三清洞・益善洞」へ移動
17時を過ぎたら、規制のない隣接エリアへスムーズに移動しましょう。
- 三清洞(サムチョンドン): 徒歩5分。夜も灯りが灯るおしゃれなカフェ・雑貨店が多く、規制はありません。
- 益善洞(イクソンドン): 地下鉄で1駅。迷路のような路地にリノベーションカフェが並び、夜の雰囲気が最高です。

徴収された罰金10万ウォンは何に使われるのか?

10万ウォン(約11,000円)という決して安くない罰金。このお金がどこへ行くのかを知ることは、北村の現状を理解する鍵となります。鍾路区(チョンノグ)がこの制度を導入した背景には、徴収そのものよりも持続可能な街づくりへの切実な願いがあります。
地域住民の生活環境の改善・清掃費用
北村は「屋根のない美術館」と言われますが、実態は「ゴミと騒音に悩まされる住宅街」です。
- 清掃コストの補填:毎日押し寄せる数万人の観光客が落としていくゴミの清掃、落書きの消去、損壊した壁の修繕費用に充てられます。
- 静粛の確保:住民が静かに夜を過ごせるよう、防音対策や路地の整備費用の財源として活用されます。
多言語案内員「北村ウォーカー」の運営費
現在、現地にはカウボーイハットを被った案内員が10名以上配置されています。
- 雇用と教育:日本語・英語・中国語を話す案内員の給与や彼らが着用するユニフォーム、配布する多言語マップの印刷代に使われます。
- トラブル防止:罰金を取ること自体が目的ではなく、「罰金があるからルールを守ろう」と思わせるための人件費として還元されているのです。
オーバーツーリズム対策のモデルケースに
北村は韓国で初めて「特別管理地域」に指定されました。将来的には、エリア内の混雑状況をリアルタイムで把握するセンサーの設置やAIによる人流抑制システムの開発など、スマートな観光管理のための研究費としても期待されています。
まとめ:住民の生の声とマナーの心得
なぜここまで厳しいルールが必要だったのか。それは、一部の心ない観光客による被害が深刻だったからです。「玄関先で座り込んで飲食される」「深夜まで大声で話される」「勝手に家の中を覗かれる」といった住民の不満がありました。
罰金10万ウォンを払う前に、「誰かの家の前を歩かせてもらっている」という敬意を忘れないことが、最高の観光体験への近道です。



